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親の介護や高齢化をきっかけに
家族のもめごとどうケリつける?
日本は"甘ちゃん"天国 男も女も自立した大人になりなさい

事例1 娘か嫁かどっちの役割
納得いかないミワさん(65歳)
義理の母(76歳)が急性肺炎で、突然、入院した。師走のあわただしい時期、夫に代わり、片道2時間かけて付き添いに通った。近くに住む弟の嫁と、お互いに疲れないように1日交替にしようと相談。負担は多少軽くなったが、気になるのは横浜に住む夫の義妹の存在(注1−1)。私たちへのねぎらいの電話1本さえもない(注1−2)。結局、年末年始の休みにも顔を見せなかった。自分の親が倒れても平気な娘っていったいなんなの?(注1−3)

注1−1 嫁か、娘か、よく聞く話。要するに介護の押しつけ。みんなでやったらええやんか!
注1−2 これは民主主義の基本である相互扶助の問題。お互いが助け合うという基本から学ばなあかん。
注1−3 聞いたらええやん。嫁としてではなく、一人の人間として、「あんた、お母さんのことどう思ってるん?」って。 ケンカしてでも聞けば、妹も考える。

事例2 痴呆老人介護の限界
もうボロボロのキョウコさん(54歳)

ぼけの母(90歳)は私を気遣っている面もあるが、言葉がすべて反対の表現になり、「私が死ねばいいと思っている」が口癖。医者は「知能犯のボケ」と言い、演技もするし嘘もつく。この人の介護がいつ終わるともなく続くような気がして(注2−1)呆然となる。私は極端な潔癖症でとにかく下の世話が辛い(注2−2)。犬の糞の始未で一生懸命練習しているが、母は知ってか知らずか汚したオムツや下着をベッドの下に隠す(注2−3)。もうほとほと疲れてしまった。

注2−1 娘としてではなく、介護者に徹して、遺産でももらうつもりやないとでけへんね。
ただ、人の世話に喜びを感じられへん人もいてる。そういう人はお金でも出して専門家を雇えばいいやん。痴呆老人の介護は知識がないと難しいからね。
注2−2 下の世話を嫌がってたんじや介護はでけへんの!命あるものを愛するってこと、あなたはんとにわかってるのかな。
注2−3 お母さんは娘にもっとかまってほしいから、甘えた行動に出てしまう。娘が嫌がってるのをわかってて、やってるんですよ。

事例3 母への恨みが噴出
発狂しそうなシズコさん(65歳)

母親は自立状態ですが精神病で、通院して投薬を受けています。先日、訪問看護婦、お金の心配や独り暮らしの不安のことで電話がありました。私は毎月会いに行っているのですが、神経が参っていて(注3−1)、母親を引き取れません。親の介護は経済的、肉体的な理由ではなく、気が向きません(注3−2)。したくないのです。私の入院中も母は一度も見舞いに来ませんでした。このまま続けると発狂しそうです。

注3−1 イイコであろうと自分にすごくストレスをかけて、なるべくして病気になってる。施設を探すか、毎日ヘルパーさんに来てもらうかしかないでしょう。
注3−2 親への恨みがあると、虐待が起きる可能性がある。介護がいちばん難しいパターンやね。その意味でも、介護は他者の手に任せたほうがいいんです。

事例4 子供に見捨てられ
寂しいハルヨさん(84歳)

遺族年金と預貯金で暮らしています。夫が亡くなったとき、私の面倒を誰が見るかを娘、息子たちが相談しましたが、誰も同居したがらず(注4−1)、以来独り暮らし。心細く、不安です(注4−2)。娘が週に1回くらい顔を出しますが、玄関先に食べ物を置いて帰ってしまいます。友人はあまりなく、お稽古友達にも相談できるような人はいません。体調不良を訴えると、医者はすぐ検査してくださいと言いますが、検査より話を聞いてほしいのです(注4−3)。

注4−1 若いころは夫に依存し、家を守ることしか考えず、老いたら子供が面倒を見てくれるのが当然と思ってる。子供たちはそんな母親の依存的な生き方に、もうウンザリしてるのよ。
注4−2 このようにしか生きられなかった戦前女性の典型で、気の毒といえば気の毒なんだけど、今さらどうしようもない。これが老いのツケなんです。
注4−3 こういうタイプはケアのプロだって大変なんです。何でも人に頼ろうとしますから。だからこそ私は、老いて一人になっても寂しくない自立した生き方を苦いころから考えておきなさい、自分の老いの責任は自分で取りなさいと、メッセージを送り続けているんです。

事例5 悪いのは誰?
みんなが許せないノリコさん(53歳)

 弟夫婦との2世帯住宅に住んでいる父(83歳)はパーキンソン病で、車いす生活。母(76歳)が介護している。近くで店を開いている私が母を手伝っている。弟の嫁は専業主婦だが自己中心的な人で、趣味が広く何かと外出する。母は弟に気を遣って嫁に文句は言えず(注5−1)、 嫁は母親を軽視した態度をとる。私もさすがに義妹に面と向かって批判できず(注5−2)、母に言うと、母は弟をかばう。私は弟の肩を持つ母親も許せなくなっている(注5−3)。

注5−1 介護は、同居している家族がいちばん大変。何もしてないように見えても、近くにいることだけで安心だから気も遣うんです。
注5−2 なんで、でけへんの?自分の枠のなかにあるものにとらわれているからでしょう。大ゲンカせんかいな。
注5−3 グジグジ思う前に、母親に自分の気持ちをはっきり言ったらどう?それにしても、感謝を知らない母親、責任取りたがらない弟‥‥‥まずは家族の意識構造変革からせなあかんね。

互いに助け合ってこその家族

 すべての「もめごと」に共通しているのは、根っこに家族の意識構造の問題があること。みんなが実に前近代的な家族のあり方にこだわって
いる。     
日本では高齢化が急激に進んだために、精神構造がまだ追いついてきてないんですね。新しい家族のあり方を構築していかないと。
 日本は甘ちゃん″大国。一人ひとりが大人になって、何かあったらお互いが支え合う「相互扶助」という、本当に民主的な考え方にならな
あかんのです。

女性は反旗をひるがえすべき
 今の日本の家族は、いまだに妻は夫の世話をし、嫁が親の介護をするといった50年前の考え方のまんま。昔はみんな今のように長生きじゃなかったからできたんです。
 でもね、2年、3年さらに5年となれば、自分の人生を犠牲にはできません。家族神話にすがるのはもうやめなさい。
虐待が起きるのも、みんなが介護を女性に押しっけているからでしょ。
 ここいらで、女性は反旗をひるがえすべき。それが男女参画型社会です。もっと闘わなあかん。「だってオンナですもの」なんて、気取ってる場合じゃないのよ!

女は経済自立、男は生活自立せよ!
 身体的自立、精神的自立、社会的自立、このすべてができて自立なんです。労働の法制度も税制も変えて、女性も働かなければ生活していけないと
いう状況にしなければ、意識は変わりっこない。夫に依存して食わしてもらおうなんていう意識から変えないと。女性も、「もっと、働け!」ですよ。
 甘っちょろいのは男性も同じ。きちんと生活自立すべきです。洗濯もし、掃除もし、ご飯も作り、子育てもする。いつまでも妻に甘えていて、老いたら
介護までしてもらえるなんて大誤算。自分の老いの責任を自分で取らなくてどうするの!
 日本は、大人になりきっていない大人が多すぎるから、今のような混乱が起きる。児童虐待、性的虐待、買春、家庭内暴力……まさに悪連鎖です。そ      
のうえ日本では、幼児期から「命の尊厳」についての教育がまったくなされていない。命の尊さを知らないから、人として「生きること」が大事にされ
ないんです。

「おかしい」ことは、「おかしい」と言おう
 ただ、「これではおかしい」とみんなが気づき始めているのが救いかな。
 日本では何事も胸に秘めることを美風とする風習が根強いけど、勇気を出して
自分の意見を言うこと、たまにはケンカをすることも大切です。
 私なんて、講演中に200人の参加者が見守るなかで大ゲンカしたこともある。私がそこまでできるのは、今の社会を本当に変えたいから。これまでめちゃくちゃ闘ってきたし、叩かれ続けてきたから、ケンカには自信がある。新しい制度、新しい社会をつくっていくためには、日々闘いの連続なんです。
 私の原点は、若いころに、インド、ネパールの医療ボランティアに参加し、目の当たりにした人々の のたれ死に≠ニいうむごたらしい死にざまです。
 人は死ぬんだということを実感し、私もどんな死に方をしようと、いつ死のうと、生きたいように精いっぱい生きて、最後によかったと思えるような人生にしたいと思ったんです。だからこそ、何でも言えるんです。そのくらいの気構えで、まず自分から変えてみましょうよ。

今すぐ実行せよ 親の意識「改造計画」
 高齢になった親は変わりっこないと思うでしょう。ところがそうやない。いろんなところで、いろんな教育を受けさせなさい。それが子の役割。教育は60代、70代だって可能なんです。
 「痴呆老人」とはどういうものなのか。「寝たきり」とはどんなものか。死ぬとは、また生きるとはどういうことかを。人は意識さえすれば、2週間で変容していくし、最後まで発達します。私もそうやって親を教育した。あきらめちゃダメ。
 どうやって、つて? 本もビデオもあるし、講演もある。そういう場所を見つけて、出かけさせる。健康で頭もクリアなのに、痴呆老人と変わらない人がいっぱいいるのが、今の日本。時間はかかっても教えてあげればできるんです。若い人がそれを面倒がらずにやらなあかん。
最後のツケは子供であるアナタに回ってくるんです。

 
介護のある暮らしをもっと豊かに ケアデザイン 2002春号 No.13  pp16-19より
 
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