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TOP > 記事紹介 > 人権情報ネットワーク ふらっと2
 

超スピードで進む日本の高齢社会。しかし、一人ひとりの意識構造は、そのスピードについていけず、ひと昔前のまま。家庭での介護問題ひとつをとっても、もめごとやゴタゴタが増え続けているのが現状です。「男も女もアマちゃんばかり。もっと大人にならんかい!」と全国行脚の講演活動を続けるホルム麻植佳子さん(51歳)。日本の将来にもっとも危機感をもつ専門家だからこそ、きょうも明るく、厳しく、鋭く問いかけます。「年金制度も、介護保険も問題ですが、その前に、あなたは本当に自立できていますか?」

正面から死と向き合うために個の確立を目指せ ビジケアサビス代表 ホルム麻植佳子さん
「なんとかなるわ」。日本の高齢社会への認識の甘い人が、とにかくこの国には多すぎる。高齢化率が17.4%の今でも、寝たきりはスウェーデンの20倍、痴呆は10倍ですよ。それを言うと、みなさん「えらいこっちゃな」となるんです。
 でも、20年後には25%になって、国民の4人に1人、50年後には3人に1人が65歳以上の高齢者ということになる。しかも、平均寿命はさらに伸びて、2025年には女性が86歳、男性が79歳に。おまけに寝たきりや痴呆の人が3倍になる予想。このままでは年金制度も、医療費も確実に破たんしてしまう。そうなって「これはあかん」では遅すぎるんです。


長患いしないで、ぴんぴんころりと逝きましょう。

 今、私たち日本人にもっとも欠けていて、もっとも大きな課題が「正面から死と向き合うこと」。死ってね、いずれ人間だれにもくるもの。だから、逃げたらあきません。
 そのために大切なのが、人に頼らず自分で生きていこうという「個の確立」です。「自分がもし植物状態になった時、延命治療を望むかどうか」「最期はどういう病院、あるいは自宅で迎えるのか」あなたは自己決定できていますか。それだけで自分の老い方を考えるきっかけになり、現在の老人医療費12兆円のおよそ半分を占める延命治療の見直しにもつながっていくんです。
愛猫を抱き寄せるホルムさんの写真 老いても元気に暮らすためには、「健康観の意識改革」と「長患いをしない努力」を自分でしていくことが大切です。高齢になれば、どうしても病気が出てくる。そういう時に「ああ、もうダメだ」とすぐ悲観的になるのではなく、「まだまだ、こっちは大丈夫」と残された能力を最大限に最後まで活かそうという意識改革です。
  そして、日頃から暴飲暴食をさけ、運動をして筋力をつけ、生活習慣病や骨粗しょう症にならないようにする。また、足が悪いなら手がある口が使える、話し相手になれるというポジティブな発想でボランティア活動をし、好きな勉強を続けるなどの生き甲斐を見つけて、人と交わって暮らすこと。ゲートボールばっかりやってる場合じゃありません。
 そうすれば長患いをする人は減るはず。人間には老齢末期という統計があって、スーパーオールド期に入る85歳まで元気でいれば、仮に寝込んでも2週間か、長くて2カ月で逝けるんです。それ以前に倒れたりすると、70歳では15年も、75歳で10年、80歳で5年寝込むというのが目安です。長く寝込めば苦しいのは自分自身だし、周りもしんどい。だからこそ「よく生きて、よく死のう」というが、私が進める「ぴんぴんころり」運動なんです。

 長患いの高齢者が多い日本では、介護者の年齢は60〜80歳代が66%で、それも、介護者の85%が妻、嫁、娘といった女性に押し付けられているのが現状です。しかも、介護が長期化することで、家族は疲れ果て、私の調査では、なじる、つねる、食事を与えないなどの介護虐待が妻から46%、嫁から32%も起きている。でもね、現場で見ていると伝わってくるんです。特に現在70〜80歳の方の妻が、それまで夫にどれだけ虐げられた生活をしてきて、長期にわたって介護をしながら、そういう気持ちにならざるを得ないかが。そうした悪循環は断たなければいけないし、介護される方もこれじゃ、長生きしても幸せじゃないでしょう。

 



女性は経済自立、男性は生活自立せよ!


 そのうえ、50年前と何ら変わらないのが、介護に対する意識構造。いまだに男たちは自分の老後について考えるどころか、親の介護は長男の嫁がし、夫の介護は妻がして当然という前近代的な考え方です。50〜60歳代の男性に質問すれば、ほとんどの人が「自分が寝込んだら、妻に看てもらう」と即答する。女性から「私が倒れたら看てくれる?」と、一度聞いてみてください。男性はその時、初めて「妻が先に倒れることもあるんだ」と分かるんです。
 ひと昔前までは、だいたいが子どもを4〜5人産んで、60〜65歳で死ぬというライフサイクルでした。長生きじゃなかった分、介護する側も2〜3週間の世話ならだれでもできました。それが、今のように2〜3年、長い人では10年以上の介護となると、自分の人生まで犠牲にはできません。それに、痴呆の介護となると、特別の知識がないと難しい。
 女性も近所や親戚への体裁を気にして「嫁がやって当然です」と介護をイヤイヤ引き受けて美談にする前に、「一人ではできない」ことを主張すべき。一人で引っかぶることは、次の世代の女性を苦しめ、さらなる女性への介護の押し付けにつながっていくのです。家族みんなで話し合って、役割分担して、新しい家族のあり方を構築しなきゃダメなんです。それには、男も女も大人になって、自立とは何かを考える。身体的、精神的、社会的、性的、すべての自立です。
 まず、女性は男性に依存して食わしてもらおうという意識から変えなきゃ。女性もきちんと働いて、税金を納める。経済的自立です。男性の場合は、生活自立。掃除も、洗濯も、炊事も、子育てもする。それで成熟した大人の人間じゃないですか。男性の生活自立ができていないことは、男性介護のあり方にもつながっていく。妻が夫を看るのは当然だという思いが強いうえに、家事が思い通りにこなせないことで、「なんで、このワシがこんなことを・・」と妻を殺してしまうケースが多いんです。


家族で話し合おう。命の尊さについて。

 介護に性の役割はありません。男であっても、女であっても、できる者がすればいいのです。そういう意味では福祉と性は、とても深い関係にある。男も女も個々に自立し、男であること、女であることに誇りをもち、根本は「人間として」お互いを認め合い、支え合って、共に社会で生きていこうというのが「福祉の心」。本来の性教育も同じです。男であること、女であること、ひいては人間であることから、「人間の尊厳」を教えることなのです。それがベースにあれば、子どもたちがセックスについて学んでも、興味本意にはとらえないし、自分の性も、相手の性も大切にできる。自分の命はもちろん、人の命も、高齢者や障害者などの弱者も大切にできるんです。
 でも、残念ながら、日本では人間の尊厳や命の尊厳が、家庭でも、教育の場でも教えられていない。そこに、さまざまな問題の根源があると思います。今のように18歳以下の堕胎も、性感染症の発症率も世界でトップという現実、しかも、児童虐待、海外での売春、援助交際という性的虐待、DVなどの悪連鎖は起こりません。親は子どもの権利も認めないばかりか、子どもを私物化して、気にするのは学校のテストの点ばかりでしょう。もっと生や死について家族みんなで話し合えばいい。そこから子どもたちも一緒に命の尊さを学んでいけるじゃないですか。
 死と向き合うことは、自分の老いに責任を取ることであり、生き方を問うことでもある。人間同士が敬愛しあい、生き方を認め合い、相手を高め合う。そこからお互いが支え合う「相互扶助」という本当に民主的な考え方も生まれてくるのです。

 
<こちらの記事は 人権情報ネットワーク ふらっと より抜粋しました。>
 
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