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痴ほうも寝たきりもみんな自分たちのこと
先日、お年寄りの看護などについて易しく述べた「福祉ってなあに」という本が出版きれた。筆者は 看護・介護のコンサルタントの、ホルム麻植佳子さん。大学や各教育機関で講師を務めている。
「医療大国とまで言われる日本ですが、福祉はまだまだ」と語る。老人看護学、成人看護学、精神保健などを専門とする麻植さんの根底に流れるテーマは「人間を大切にすること」だそうだ。
「20年以上前になりますけど、看護学校を卒業してすぐ医療ボランティアでネパールに行ったんです。朝、橋の上で生きていた人が、夕方帰るときに通ったら死んでいるというようなことがゴロゴロありました。人って本当に簡単に死ぬんだなあ、だからこそ生きている間は精いっぱい生きなくつちやいけないと強く感じました」
ボランティア終了後すぐ日本には帰らず、ワゴンを買い自分で運転して、北欧諸国まで見学に行った。スウェーデンで現在の夫と出会い、高齢化社会の現実を目の当たりにしたことが人生の方向を決定付けた。
「見たこともなかった痴ほう老人や寝たきり老人がたくさんいる。6〜8人の重度痴ほう老人を12人のスタッフで介護する『グループホーム』など、制度もしっかりしてていました。日本ではまだ高齢化社会の『こ』の字すら言われていない時期でしたが、調べると間違いなく向かっていました。何か対策が必要だと思いました」
結婚後、夫の祖国スウェーデンで子供を育てながら働き、同時に介護・看護を勉強した。スウェーデン厚生省外国人看護教育課程を修了し、スウェーデン地域看護研修も修了。
「慣れないスウェーデン語での勉強にヘトヘトになりそうなときもありましたが、これを学んでいればいつか日本で役立つんだと、必死で頑張りました」
そして、大阪医科大学看護専門学校専任教員の誘いを受けて帰国。ちょうど日本でも高齢化社会対策の必要性が声高に叫ばれるようになった頃だった。日本で働きたいという願いを理解して、夫も子供も日本についてきてくれたという。夫は現在、大阪外国語大学のスウェーデン語学科で教えている。長男は大学受験生で、医師を目指しているそうだ。
麻植さんは今では年に一回、施設長たちを連れて北欧諸国の福祉制度の見学ツアーに出掛けている。
「まだまだ日本の福祉制度は満足できるものにはなっていません。病院は3カ月以上は入院させてくれない、特別養護老人ホームは待ち状態。自分の親が倒れたらどうするかを考えると、どれだけ頼り無い社会かが分かります」
日本の福祉制度が充実しない理由の一つには、日本人の「甘え」
の精神がある、という。
『だれかがしてくれる』という依存心があるようですね。その『誰か』が、『自分』にならないところが問題。スウェーデンでは、仕事からリタイアしたお年寄りで、ボランティア登録をする人がたくさんいて、みんな生き生きとしています。自分たちの問題だと自覚しているんでしょうね。日本でも、こういう社会でいいのかということを身の回りから突き付けて行くことが大切。『なぜ介護は女性だけがすることになっているの』と夫や周りに問いかけるだけでもいいんです。1人1人の小さな動きが、大きな流れを作り出すことにつながるんじゃないでしようか」
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