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第4回ヘルスリサーチフォーラム
新しい時代の保健・医療を考える
―その科学的評価を求めて―
1997年度 財団法人 ファイザーヘルスリサーチ振興財団
研究発表 テーマ:地域医療・福祉 pp90-94
在宅介護者のWell−Beingに関する調査
一日本とスウェーデンとの比較を通して−
この調査は、スウェーデンのカールスタッドという、ちょうストックホルムから約3時間半位のところにある人口78,000人という限定された地域と、日本の特に九州、四国、大阪で在宅介護をしている在宅介護者の状況をリサーチしたものです。
高齢者の在宅介護ということが、官民あげて促進されているわけですけれど、高齢者自身も住み慣れた家での療養生活を望んでいることが多く聞かれております。しかし、核家族の増加だとか、介護世代との生活分離などの家族形態の変化などが、家庭内で介護者を確保することを非常に困難にしております。
在宅に比べ、施設介護は割高になると言われながらも、施設への入所待ちが半年から1年以上の待機期間を余儀なくされています。在宅介護を良好に継続するには、在宅ケアを支援するシステム整備というのが非常に早急に実施される必要があるのではないかと思っております。
まず日本の状況を調査しました結果、日本は介護の続柄というのは配偶者が25名(43,89%)、娘・息子夫婦が31人、母親が1人。男女別では男性10人の17.5%に対し、女性は47人の82.4%と、介護の8割強は女性が担っております。介護協力者は娘・息子夫婦32人の56・1%、姉妹5人の8.8%、近所が1人、介護協力者無しが19人の33.3%でした。協力者の男女別では、男性11人の28.9%、女性27人の71.1%と、協力者でも女性が7割を占めています。
介護を行う上での介護者の心身の負担としましては、身体症状が20人の35%にあがってきています。睡眠不足、疲労感は16人の28.1%、介護者不足を13人の22.8%があげておりまして、介護人の人手不足、身体症状、睡眠不足、疲労感、いらいらを引き起こしている現状であります。
介護者の願望については、旅行とか買い物とか外出を52.6%があげております。出かけましても要介護者のことが気になる、あるいは介護協力者に任せきれないなど、精神的、時間的な拘束感が大きいことがあげられていました。
公的在宅介護サービスの満足度は、公的サービスに満足している人は24.6%あります。逆から見れば4分の3は満足をしていないという現状です。
介護をする上で不足していることは、公的サービス、親族の介護援助、自分の時間、金銭面、睡眠時間の順であがっております。早急に介護支援サービスの整備で解決できる問題かと思います。
これは、日本の調査からですが、介護はもっぱら家族の負担のもとに行われております。
その主たる介護者は嫁だという実態が出てきております。
介護の支援として公的介護を利用した家族はわずかで、スウェーデンのようにほとんどの介護家族が利用している現状とは異なっていました。これは、日本では制度の利用にさまざまな制約があり、例えば家族のいない独居者はいくら希望しても在宅ケアを受けることは不可能に近いことや、希望する時に利用できるとは限らない状況などが、十分利用されていない一因になっているのではないかと思います。これは、在宅サービスの利用ニーズに対してサービスの絶対量の不足、利用者への情報提供の不足、行政側の供給対策に対する姿勢の不十分さもあげられるのではないかと思われます。
日本の在宅ケアは、要介護者が在宅を望んでいるからということが前面に押し出され、介護者の負担や住居、経済的な状況を抜きにして進められてきたといえます。
配偶者間の介護において、妻が介護者となっても、夫が介護者となることはほとんどなく、娘や嫁に介護を委譲しておりました。一方、スウェーデンでは、在宅においては、配偶者相互の介護はあたりまえに行われていますし、両国の介護状況からは、日本において介護が女性のタテ関係の中で行われるのに対し、スウェーデンでは夫婦のヨコ関係によって行われているといえます。
介護に関する支援状況を比較しましても、スウェーデンでは公的支援によるものが大きいのですが、日本では公的支援として、医療控除や、あるいは医療制度などの金銭的支援は受けられても、介護支接は家族や近親者など介護者の血縁者から人的支援を受けていることが明らかになりました。
日本側の支援内容として、精神的支援などあげられますけれど、精神的支援者の中には夫よりも友人をあげており、夫からの支援はほとんど無いに等しい状況です。
以上まとめてみますと、
(1)要介護者の年齢は、スウェーデンの方が約8歳高い状況で、高齢者でも介護は継続できるという状況にあります。
(2)日常生活の自立度や社会的活動において、日本は寝たきりが3割いるのに対しまして、スウェーデンでは寝たきりの者はいないという現状です。スウェーデンは何らかの形の社会的支援により日常生活が行われていますが、医療費に関して24時間援助を受けていても、その支払いは、日本の費用の約1/10で済んでいるという実態です。
こういうふうに、北欧と日本の現状は違うということは皆さんご存じだと思います。その中で、なぜスウェーデンがこういう状況を作りあげてきたかということをこれからご説明したいと思っております。
何が非常に違うかと申しますと、歴史的な状況が違います。
よく、スウェーデンは小さな国だし、本当にこういうシステムを取り入れることができるのかとおっしゃる方がたくさんいらっしゃいます。なおかつ、小さな国だからこそ小回りがきいてこういうことができるのではないかと。スウェーデンの人口は891万です。日本は1憶2,500万という莫大な人数を抱えておりますし、高齢社会としましても非常に急激なスピードできているのも事実です。
ですけれども、一つの地方、あるいは地域としますと、どういうふうな差が出るかということを見ていただければよくわかると思うのですが、まず、歴史的なことを見ますと(表1)、1913年には国民年金保障の成立を見ております。今、非常に日本の家族というのが変化しているのですが、その変化に対応してきた結果が今のスウェーデンの介護保障のところまできているのだと思います。
表1生活保障の歴史
| 1913 |
国民年金保険 |
| 1919 |
一日8時間労働 |
| 1934 |
失業保険 |
| 1937 |
出産手当金 養育費積立替金 |
| 1938 |
法定年次有給休暇2週間 |
| 1948 |
児童手当金 |
| 1952 |
国民年金生活者の住宅手当金 |
| 1953 |
年次休暇 3週間へ延長 |
| 1955 |
国民医療保険 |
| 1956 |
生活保護法 |
| 1960 |
週45時間労働 |
| 1960 |
国民付加(所得比例)年金 |
| 1963 |
年次休暇 4週間へ |
| 1969 |
有子家族の住宅手当金 |
| 1971 |
週40時間労働 |
| 1974 |
国民歯科医療保険 |
| 1974 |
両親(育児)有給休暇 |
| 1976 |
国民年金年齢のフレックス化(67歳から65歳へ引き下げ、パート在職年金新設60−64歳) |
| 1978 |
年次休暇 5週間へ |
| 1982 |
社会サービス法 児童手当金多子加算 |
| 1983 |
児童手当金 高校在学19歳まで給付延長 |
| 1985 |
児童手当金 増額 |
| 1987 |
児童手当金 増額 |
| 1988 |
児童手当金 多子加算増額 |
| 1989 |
両親休暇 450日へ延長 |
| 1989 |
親族介護有給休暇 |
| 1990 |
児童手当金 増額 |
これだけの差があるということを、まず頭の中にいれていただきたいと思いますし、また、古い資料になりますが、1990年のスウェーデンのナースの数にしましても、公的支援にかかわる人数がまったく違う。約30倍、地域によりましては100倍くらいという差が出てきております(OHP2)。
まず、基本的にスウェーデンの介護型というのは、ノーマリゼーションとか、あるいはセキュリティとか、生活条件の平等とか、コミュニティにおける生活の活発な参加だとか、そういう教育を200年近く作り上げてきた国であります。
その中で、私達が調査しましたスウェーデンのカールスタッドの支援状況としましては、まず、介護に関する家族の協力というのはできる限りやっていますけれども、しかし、ほとんど(53名中40名)が1人暮らしという中での支援をされております。子供との同居は皆無です。
自宅に戻りました25名全員が、大体平均して12時間という公的サービスを受けておりまして、ほとんどが死の直前まで、アー・エス・フォー(ASH)というのですけれども、病院からの在宅医療、支援というものを受けて、自宅で死んでいくという状況になっております。
スウェーデンにおいては、高齢者とその家族に関して、過重な負担のかかるケア責任は、公的ケア提供者と家族で分かち合うべきであるとしております。家族やホームヘルプサービスがそれぞれ独立してケアを行っていますし、子供も親の介護義務はない。この調査においても同様の結果が得られております。
身寄りや親戚、家族はいても、その疾病状況及び介護状況において施設入居となる例が半数あります。
カールスタッドで、78,000人の中で施設(ホーム)の種類と数は、ナーシングホームが350床あります。サービスハウスが520戸ありまして、グループホームが450床あるという実態です。 また、12時間のホームヘルプの内容としまして、重症の家族員を介護するために最高60日間の有給介護許可制度があり、1991年にはスウェーデン全体で6,500人の利用者を見ております。また、家族が完全にコミューンでありますとか、あるいは、週20時間以上の介護時間があれば市町村の職員になるというシステムが導入されております。これは高齢者の娘、息子の通常の給料の9割ほどが払われるもので、1989年に始められ、年間5,000人に及ぶ人々が利用されております。
また、年に2〜3回、1〜2週間、短期的に預かる方法もしております。
ホームヘルパーにかかる費用については、月曜から金曜まで昼間の1、2時間訪問し、簡単な家事支援とベッドづくり、買い物、食事の用意などを支援した場合で、高齢者が支払わなければならない費用はlカ月600クローネ、日本円に換算して人体9,000円です。また、昼間と夜間に1回ずつ、月曜から日曜日まで毎日、排泄介肋や衣服の着脱を含めますと1カ月1,200クローネ(約18,000円)。月曜〜日曜まで24時間ホームケアを受けますと1カ月1,700クローネ(約25,500円)です。
システムをお話ししますと、日本にも同じような方法論はございますが、人口20,000人の向こうの市町村ではOHP3に示すようなシステムを構築しております。ホームサービス、住宅・交通サービス、住宅手当、その他ホームヘルプ、普通住宅サービスハウス、グループハウス。これにつきましては、また、もし質問がございましたらお話をしたいと思いますが、これは省かせていただきます。

次に、医療の住宅サービスと医療サービスとの関係は、OHP4のように、ナーシングホーム、長期療養病院、救急病院などというものが地区地区にすべて網羅されているという実態です。
最後になりましたけれども、以上のことから、介護者を家族内で確保しなければならない現状、在宅介護をより長く、安寧に継続することは、在宅ケアシステムの中に介護者を介護から短期間でも解放するようなサービス、あるいは、介護者の愚痴をこぼす先、そういう公的介護協力者の確保などを整備することが緊急に求められていると思います。
24時間拘束感のある介護者の心身の負担を軽減し、要介護者を外側に向けた役割や楽しみ、生きがい目標を持ち続けるためにも、介護者と要介護者双方の精神的サポートも必要だと思います。
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